この部に入った理由。
もちろん、目立ちたいなんて理由は無かった。
むしろ、部活に集中したい俺は、あんな風に騒がれると迷惑だ。
・・・だが。
それでも、お前に出会えたのなら・・・。
それも良いかと思う。
マネージャーのの姿を見ながら、そんなくだらないことを考えてしまった自分に、俺は思わず溜め息を吐いた。
「・・・日吉、どうかした?機嫌悪い?」
どうやら、そんな俺の様子をに見られていたらしく、は俺の所へやってくると、俺の顔色を窺った。
「別に。・・・ただ、相変わらず周りが五月蝿いと思っただけだ。」
「みんな応援してくれてるんだから、そういうことは言わないの。」
俺の返答を聞き、は少し呆れたように笑いながら、そう答えた。それが馬鹿にされたように感じ、少し苛立った。
「誰も頼んでなどいない。」
「これだから、モテる男は・・・!!」
しかし、今度はが怒り始めたために、俺は少し驚き、何も言い返さなかった。
・・・一体、どうしたと言うんだ。
そう考えた俺に答えるかのように、は熱く語り出した。
「そりゃ、頑張ってるところを見られたくない。そういう気持ちもわかるよ?でも、みんながみんな応援してもらえるわけじゃない。どれだけ頑張って、どれだけ結果を出したとしても、これほど応援してもらえるとは限らない。・・・だから、日吉はもう少し有り難く思うべきだよ?」
・・・たしかに、の言う通りかもしれない。「モテる」「モテない」の話は知らないが。それでも、必ず応援してもらえるわけじゃないという理屈はわかる。
だから、俺も少しは反省しようと思った・・・ときだった。
「私だって、日吉や先輩方みたいに、『キャーキャー』言われてみたいんだから・・・!!」
「・・・は?」
「だって、私も同じテニス部なのに・・・!でも、黄色い声援を送ってもらえるのは、カッコイイ選手たちだけ、なんだからね・・・!」
少しでもを感心しかけていた俺は、すぐさまそれを消し去った。
・・・しかし、俺も落ち着いて、先ほどのの言葉と合わせて考えてみる。・・・・・・もしかすると、努力しても応援されていないというのは自身のことで、それを嘆いているのではないだろうかと。
それなら、まだを馬鹿にしてはいけないと思い直す。が。
「あぁ、どうして、みんな顔も良くて、テニスも上手いの・・・!それだから、モテるんだ・・・!!私なんて、私なんて・・・!」
どうやら、やはり「モテる」「モテない」の話がメインのようだ。・・・同情しかけた俺が馬鹿だったか。
「羨ましい・・・。私も言われたい・・・。」
ずっと、そんなことを言っているに、俺もさすがに腹が立った。
・・・・・・大体。は俺の彼女でもあるわけで。今更、モテる必要はないだろう。どういうつもりなんだと、そういう意味でも・・・・・・・・・いや、むしろ、そういう意味での方が大きいかもしれないが。
とにかく、俺は再びに苛立った。
「そんなにチヤホヤされたいのか。」
「当たり前じゃない!あ〜ぁ、モテる男にはわからないんでしょうね〜?」
相変わらずの言い方に、俺も更に棘のある言葉を返す。
「だったら、特定の誰かと付き合わない方がいいんじゃないのか・・・?」
「付き合ってても、人気な人は人気でしょ!」
否定するのは、そこなのか。俺の言葉に「『別れろ』と言いたいのか」などとは思わないのか。
にとっては・・・そんなこと、心配でもないのか。と俺が我を忘れそうになるぐらい、かっとしかかった時。
「あ〜ぁ、私も女の子たちに『キャーキャー』言われたい・・・!」
先ほどと同じ調子で、がそう言った。・・・・・・。
「・・・女に??」
「うん。だって、男の子は『キャーキャー』言わないでしょ?」
「いや・・・それはそうかもしれないが・・・。」
「男の子が『キャーキャー』言ってたら、ちょっと変だよ。」
は、その光景を想像したのか、少し笑ってから、また話し出した。
「だからって、男の子に『ワーワー』言われても、ちょっと怖いしね。」
「だけど、お前も女なんだから、男に言われた方が嬉しいだろ?」
「そんなことないよー。やっぱり、同性にも褒められた方が、人として魅力的なんだと思えるじゃない!」
たしかに、の言っていることは正しい。何も間違ってはいない。だが、俺の疑問には答えてくれていない気がして、どこか納得できないでいると、が笑顔で言った。
「もちろん、異性に褒められたいとも思うけど。それは、私の好きな人だけでいいもん。・・・自分の好きな人にだけ愛してもらえれば、それで充分すぎるほど幸せだから。」
これが俺の望んでいた答え・・・ではなかった。それでも、俺を納得させるには充分の――いや、それこそ充分すぎるほどの答えだった。
だからこそ、予想だにしていなかったの返答に、俺は何も返せないでいた。すると、はまた先ほどの調子で話を続けた。
「・・・だから、女の子に『キャーキャー』言われたいのは、贅沢なんだってことはわかってるけど!でも、言われてみたい・・・!!」
今度は、俺もそんなの言葉に対し、苛立ちも疑問もなく、単純に笑って聞くことができた。
・・・だが、それを聞き流しはしねぇからな?
「そうか?俺はそれを贅沢だとも思わないな。だって、それは不要なものだろう?」
「不要じゃないって!話聞いてた?・・・日吉だって人気なのは、それだけ魅力的だということ。私も、同性に褒められることで、人として魅力的なんだと思いたいの。わかる??」
また、が熱く語っているのを見ながら、俺は冷めた態度で返事をした。
「理解はしている。だが、少なくとも俺には不要だな。・・・俺は、お前に認めてもらえれば、それでいいから。」
は、俺よりも直接的な言葉で言っていたくせに、いざ俺に返されると、顔を赤くし始めた。
・・・やっぱり、お前と居ると、飽きないな。
だから、俺の考えは変わらなかった。
周りは騒がしいと思うし、正直鬱陶しい。
応援してもらえるのは有り難いが、限度ってものがあるだろう。
それでも、文句を言わないでいるのは、お前がここに居るからだ。
俺にはの声援があれば・・・いや、が傍に居てくれればそれでいい。
お前にとっての『俺』が、俺にとっては『お前』だから。
今回は、ちょっと短めですね・・・。すみません。まぁ、私の長文はダラダラとしてしまうだけなので、短めの方がいいかもしれませんが(苦笑)。
とにかく、実は久々の日吉夢!自分でもビックリです。まさか、こんなに期間が空いてたなんて・・・(汗)。まぁ、日吉くん以外のキャラも、ちゃんと書いてるんだってことで・・・・・・・・・って言い訳は通りませんかね(滝汗)。本当、すみませんでした・・・orz
ちなみに、このテーマは「女の子に『キャーキャー』言われたい」でした(笑)。もちろん、殿方にモテるに越したことはありません。むしろ、モテない私は、そんな夢のような世界を味わってみたいものです(笑)。
しかし!それ以上に、女の子たちにモテたい!ジャ○ーズ事務所とか、ヴィジュアル系バンドとかに入りたい!!なんてことを、よく言っております(笑)。
そしたら、友達に「キャーキャー(棒読み)」と返されました・・・。でも、「意味わかるよ」と言ってくれた子もいます!・・・皆様も言われてみたいと思いません??(笑)
('09/05/12)